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精製・合成技術について
(クニピア・スメクトン)

はじめに

ベントナイトは、膨潤性や増粘性、陽イオン交換性などといった性質を持っているため、私たちの身の回りの様々な産業分野で利用されています。しかし、ベントナイトのような天然に存在する粘土は、粘土鉱物以外に石英や長石などの不純物を含んでいます。このような不純物を含んでいると、工業用素材の開発などを検討する際、適用には不十分となる場合があります。そのため、不純物の少ない高純度の粘土が求められています。

当社製品の「クニピア」は、ベントナイトに含まれる不純物を取り除き、主成分であるモンモリロナイトの純度を限りなく高めたものです。昨今、粘土に対する機能および技術は、より高度なものを要求されています。しかし、クニピアは天然の粘土であるため、そのコントロールに限界があります。このような問題に対応するために合成された粘土もあります。

当社製品の「スメクトン」は、熱水処理によって化学合成してできた粘土です。クニピアおよびスメクトンは、その性能から様々な産業分野で利用、検討が行われています。

クニピアおよびスメクトンとは

クニピアおよびスメクトンは層状ケイ酸塩鉱物であり、スメクタイトというグループに属する粘土鉱物からなります。スメクタイトにはモンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、スチーブンサイト、ヘクトライトなどが存在します。

クニピアは、ベントナイトに含まれる不純物を化学物質などを一切添加せずに取り除き、主成分であるモンモリロナイトの純度を高めた精製ベントナイトです。クニピアの主成分であるモンモリロナイトの単位結晶は、厚みが1nm、幅が100-1,000nmのとても薄い板状(平板状)の結晶をしており、比表面積が非常に大きい特徴を持っています。

スメクトンは、熱水処理によって人工的に不純物のない高純度の粘土を合成したものです。当社では、サポナイト、スチーブンサイト、ヘクトライトの各粘土鉱物を化学合成によって製造することができます。

クニピアおよびスメクトンは、膨潤性、増粘性、チクソトロピー性、陽イオン交換性など、様々な特性を持っています。さらに、無機物質であるため微生物による分解や変質作用をほとんど受けず、人体にも優しい素材です。

クニピアのAFM画像

クニピアのAFM画像

クニピア-F分散液

クニピア-F分散液

スメクトン-SA分散液

スメクトン-SA分散液

膨潤性

クニピア-Fの膨潤力測定

クニピア-Fの膨潤力測定

クニピアおよびスメクトンは、水を吸収してその体積を何倍にも増やすことができる膨潤性と言う特長を持っています。この膨潤性は、クニピアおよびスメクトンが水と接触すると層間の陽イオンと水分子が水和し、単位層間の距離が増加していくことによって起こります。

増粘性

スメクトン-SA

スメクトン-SA

クニピアおよびスメクトンを水中に分散させると層間陽イオンと水分子が水和して、単位層にまで分離します。単位層まで分離したクニピアおよびスメクトンは、単位層の表面に厚い水和層を作り、分散液中の固相率が上昇します。そのため、その分散液の粘度は、分散媒である水に比べ非常に大きくなり、粘性を示すと考えられます。

したがって、水と溶質であるクニピアおよびスメクトンの比率を変えることによって、低粘度の分散液から固いゲルまで自由に粘度を調整することが可能です。クニピアおよびスメクトンは、共に非常に優れた増粘効果を発揮します。

チクソトロピー性

クニピアおよびスメクトンは、せん断をかけると減粘するシェアシニングの性質を有し、かつ粘度が時間とともに変化するチクソトロピー性を有します。

そのメカニズムは、次のように考えられています。

クニピアおよびスメクトンは、単位層の層面は負(マイナス)電荷、端面は正(プラス)電荷を帯びています。水中で十分に分散させた後、分散液を静置すると、負電荷を帯びた層面と正電荷を帯びた端面がお互いに引き合い、層面-端面結合の立体的な会合構造を形成します。これをカードハウス構造と呼びます。

せん断速度を上げていくと、カードハウス構造が破壊されて粘度が低下し、その後せん断速度を下げていくと徐々に層面-端面結合の立体的な会合構造が形成され、高い粘度を示します(図参照)。この時、同じせん断速度でも往路と復路で粘度が一致していません(グラフ参照)。つまり、構造回復に時間を有していることが示されています。化粧品や塗料の液だれ防止など、様々なシーンで利用されている機能です。

チクソトロピー

陽イオン交換性

クニピアおよびスメクトンの単位層面では、電荷が不足し負(マイナス)電荷を帯びています。そのため、電荷のバランスをとるために、単位層面に陽イオンが取り込まれています。この陽イオンは他の陽イオンと簡単に交換することが可能であるため、交換性陽イオンとも呼ばれています。交換性陽イオンの種類を変化させることで特性も変化し、触媒などの利用も検討されています。モンモリロナイトやサポナイトなどは、鉱物種の違いによって負電荷の大きさが異なるため、交換性陽イオンの量も異なります。

また、無機陽イオンの代わりに第4級アンモニウムイオンなどの有機陽イオンと交換することで、各種有機溶媒に使用可能な有機ベントナイトを作製することができます。

クニピアおよびスメクトンの用途

クニピアおよびスメクトンは、膨潤性、増粘性、チクソトロピー性、陽イオン交換性など、様々な特性を持っています。このような特性を活かして、様々な産業分野で利用、検討が行われています。さらに、無機物質であるため腐敗せず、ほとんど品質劣化を起こす心配もありません。今回は、その一例を紹介いたします。

精製ベントナイト:クニピアシリーズ

水系の塗料や化粧品の粘性調整剤、沈降防止剤として用いられています。また、アスペクト比が非常に大きい特徴を持ち、ガスバリア性を付与するための樹脂フィラーとしても用いられます。

精製ベントナイト(クニピア)の粘度と固形分濃度比較

精製ベントナイト(クニピア)の粘度と固形分濃度比較

合成スメクタイト:スメクトンシリーズ

水分散時の透明性が非常に高く、少量で非常に高い粘性付与効果を発揮します。クニピア同様に水系の塗料や化粧品の粘性調整剤、沈降防止剤として用いられます。

合成スメクタイト(スメクトン)の粘度と固形分濃度比較

合成スメクタイト(スメクトン)の粘度と固形分濃度比較

塗料・インキ

塗料・インキ

増粘効果による顔料の沈降防止として広く使用されています。さらに、クニピアおよびスメクトンの持つチクソトロピー性によって、液ダレ防止や曳糸性改善などとしてその力を発揮しています。また、スメクトンは無色半透明であることから、塗料・インキの色への影響がありません。

樹脂フィラー

樹脂フィラー

最近では、高機能材料としての可能性を高く評価されています。クニピアおよびスメクトンを樹脂に数%程度添加することで、バリア性の向上、耐熱性や難燃性などの機能付与を示します。

農薬

農薬(フロアブル製剤用原料)

クニピアおよびスメクトンは、液状農薬にも使われています。微粒子化された農薬原体は、それ自体では水中で分散状態を保持することができません。しかし、増粘効果のあるクニピアおよびスメクトンを用いることで、分散状態を保持することが可能になります。

化粧品

化粧品

昔から様々な化粧品に利用され、主に増粘剤として注目されてきました。最近では増粘効果だけではなく、高アスペクト比による被膜効果によって長時間の保湿効果を得ることができます。さらに、クニピアおよびスメクトン自体に吸着効果があるため、細かい粒子が毛穴の奥に入り込み、汚れを効果的に除去します。

その他

クニピアおよびスメクトンは陽イオン交換性を持っています。この特性を活かして、層間の陽イオンの種類を変化させて、新しい機能を付与することができます。有機ベントナイトの作製は、陽イオン交換性の特性を利用した一例になります。このような層間の利用は、今後も可能性が考えられます。

有機ベントナイト: クニビスシリーズ

有機合成スメクタイト:スメクトンシリーズ

粘土粒子の表面を化学修飾することで各種有機溶媒との相性を改良したスメクタイトです。粘性付与効果の高いクニビスシリーズ、透明性の高いスメクトンシリーズがあり、有機溶剤系塗料の粘性調整剤や沈降防止剤として用いられます。

各溶媒の分散液

各溶媒の分散液

各溶媒の増粘効果

各溶媒の増粘効果

よくあるご質問

Q

クニミネ工業では様々な製品シリーズがありますが、「クニピア」「スメクトン」と他のシリーズの違いを教えてください。

A

ベントナイトの特性は原料に大きく由来します。
「クニピア」シリーズは、山形県の良質な原鉱を原料として用いており、増粘性、吸着効果、保湿効果、乳化安定性に優れています。
「スメクトン」シリーズは、透明性に優れ、天然のベントナイトとは違った用途への展開が期待できます。

Q

クニピア-Fとクニピア-Gは何が違うのですか?

A

品質的には何ら違いはありません。製品形状のみが異なり、クニピア-Fは粉末状、クニピア-Gは鱗片状(フレーク状)の製品となります。
クニピア-Gは鱗片状のためクニピア-Fよりも嵩張りますが、水に添加する際に比較的ダマになりにくいという特徴があります。

COMPANY

グループ会社

クニミネマーケティング株式会社
関ベン鉱業株式会社

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